むつみ会会員　文芸作品　１２月


　　　　　　　　　　　　　俳句　　　


　　　　　　　　　　　　　舟岡正男


　　　　　　　　　　葉の散りし　　　梢に一つ　　　　小守柿

　　　　　　　　　　台風に　　　　　皇帝ダリア　　　生き残り

　　　　　　　　　　山麓に　　　踏み入りる場なく　　笹竜胆　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　森　　閑行

　　　
　　　　　　　　　　　　　小夜ふけて　　蟲の音添ふる　　雨のおと　　　


　　　　　　　　　　　　　菊の香や　　　裾に花野の　　　　衣かな


　　　　　　　　　　　　　　隅なきを　　見るのみかはと　　　月に雲



　　　　　　　　　　短歌　　


　　　　　　　　　　　　　内海　こう一　

　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　シルクロードにて
　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　天山の　　　　雪解け水の　　　カレーズに

　　　　　　　　　　ぶどう実りし　　　　　農民のかて

　　　　　　　　　　　　　　　シルクロードにて　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　北載河　　狼煙台に立ち　　地平線

　　　　　　　　　　　　　見つめる兵は　　まぼろしを見る

　　　　　　　　俳句　　　


　　　　　　　　　　　　　舟岡正男　１１月


　　　　　　　　　　日本橋　　　　江戸の昔や　　　　魚市場

　　　　　　　　　　ビル街の　　　按針の碑に　　　　秋の風

　　　　　　　　　　秋日和　　　　老舗めぐりや　　　日本橋　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　森　　閑行　１１月

　　　
　　　　　　　　　　　　　名月や　　　　破れ障子の　　　　文机に　　　


　　　　　　　　　　　　　秋の日に　　　鯔や刹那の　　　水しぶき


　　　　　　　　　　　　　背戸に乾す　　　半股引きに　　秋の風

　　　　　　　　　舟岡正男　１０月


　　　　　　　　　　山の湖　　　　夏うぐいすの　　　　声涼し

　　　　　　　　　　夏祭り　　　　浴衣のしつけ　　　取らぬまま

　　　　　　　　　　華やかに　　月下美人や　　　　　夜の闇　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　森　　閑行　１０月

　　　
　　　　　　　　　　　　　洗らはれて　　　肌なめらかに　　　端渓硯　　　


　　　　　　　　　　　　　迎火や　　　　　　一年二年　　　　　三年と


　　　　　　　　　　　　　　露けしや　　　　　　小萩こぼるる　　　谷中道



　　　　　　　　　　短歌　　


　　　　　　　　　　　　　内海　こう一　１１月


　　　　　　　　　　　　　　がび鳥の　　　さえずり高く　　　目をさます

　　　　　　　　　　　　　　　我が家の庭　　　そんなに良いか
　　

　　　　　　　　　　　　　　昼時の　　　建築現場　　　昼飯くわず

　　　　　　　　　　　　　　　　離れて一人　　外人労務者



　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　磯部　秀男

^{極東に　五輪イヤーの　初日の出}

初詣　人の中なる　弧なりけり

暖冬や　袂も軽ろし　晴れ着の娘


内野　青陽


除夜の鐘　かすかに聞こゆ　どこの寺か

全国が　晴れてめでたき　初日の出

一年の　成長はやき　年賀状