北 欧 旅 日 記 
(その2)


M I (自治会員の方です)



6月1 2日(日)
5時起床、雨
 当ホテルは7時半から朝食なので食事をせずに6時過ぎチェックアウトをして、タクシ ーを呼んでもらおうとフロントでその旨を話したら、笑顔の爽やかなホテルマンが時間 外にもかかわらず「ブレックファストをどうぞ」と昨夜ディナーをとった隣のダイニン グルームを手で示してくれた。
 カプチオ-レと黒パン、生のサラミ、レッドピーマンと太いキュウリのサラダ、 とても美味しかった。昨夜あんなに食べたのに今朝もこんなに食欲があるとは 我ながらビックリ。朝早くから用意して下さったボーイさんとフロントマンに感謝を こめて握手をして、6時2 0分タクシーにて駅へ。(38 Dkr=¥650位)
 当オステルサンドからガリベ-ラへ向かつて1 4時間の列車の旅へ出発。 国鉄なのか私鉄なのか分からないがINLANDSBANANという2両編成列車で 6時4 5分発が少し遅れて発車。広い車内に大きな荷物から折り畳み自転車、テントに寝袋などを置く場所が有り、 網棚も幅が広いが、ほとんど埋まってしまった。夏休みで出かける人達の荷物だ。 2カ月余りのバカンスを家族で楽しむとのこと、普段は質素に暮らしてこの時季に たっぷり遊んでリフレッシュするのだろう。2人分の切符(380Dkr)を買ったら残金が少なく心細い、車掌さん(女性)が検札に 来たので換金のことを聞いたらStorumanで昼食のため30分停車するのでBANKが有るからExchange出来ると聞いてひとまず安心。
 列車が進むに連れて雨が上り空はぬけるように青い。陽射しは強いけど時々筋雲が 流れて、車窓からも空気の冷えを感じる。これが北欧の夏なのだろうか、白樺と針葉樹の森は若葉色に輝いている。朝食で停車した駅
 Ulriksforsに8時過ぎ朝食のため10分程停車、風は冷たいが空気はとても澄んでいる。ホームは形だけで駅前はただただ広く、可憐な白い花が一面に咲いている。10本程摘んでドライフラワーにして持って帰ろうとしたら夫に虫がついてるかも 知れないからよした方がいいよと言われて一本だけガイドブックに挟んで持って 帰ることにした。ここで写した写真と一緒に今はアルバムの中で咲いている。
  朝食は駅前にワゴン車が1台止まっていて前もって注文した分を運んんで来る、 注文した人だけが受け取って列車で食べる。 だから10分の停車で間に合うのかと納得。 そう言えば車掌さんが検札に来たとき「ブレックファスト…」と言っていたが、ホテル で済ませたので頼まなかった。1日1往復だけの駅での商売だが、林業が盛んだという国の地元の人が副業にしているのかなと思いつつ
Ulriksforsを後にした。
 北へ北へと列車は進む、大小の湖が次々と現れては消え、また見えて来る。 藍色の美しさ、自然の優しさに飽かず見入っていた。静かに走っていた列車が急に物凄い警笛を鳴らしたので、こんな山奥に人が居るの だろうか、線路の修理でもしてるのかしらと思い景色を眺めていたらトナカイの群れ が一斉に森の方へ逃げて行く。

   −− 山又山越えて列車は遠くより警笛高くトナカイを追う −−

トナカイ出没場所すると列車は急プレーキで止まり何故か2、3m戻った。すぐにアナウンスがあった がどうもスエーデン語らしく全然分からない。そのうち乗客が右側の窓の方へ行き ガヤガヤしだした。私達も見ようとしたが、背の高い人ばかり、背伸びをしてたら 前の人が空けてくれて指を指しながら話してくれたので、その方を見たら立派な角の トナカイが一頭全身ずぶ濡れになって沼の中でもがいて居る。どうも列車に跳ね られたらしい。
 暫く様子を見ていたら、段々動きも鈍くなってしまいもう駄目のようだ。 運転手が先の尖った5 0 cm位の鉄棒を持ってゆったりした足取りでトナカイに近づき、 その棒で頭を一撃したが血は吹きでないままトナカイの命は終わった。 目の前の生々しい出来事に大きなショックを受けて「残酷なことを・・・」と夫に 言ったら、「どうせ元気になれない、苦しむよりは安楽死のほうがトナカイにとって も幸せだよ」と言う。高福祉国だけに動物にも愛情が注がれているのを知り少し心が安らいだが、 暫くは頭から離れなかった。
 事が起こってから約2 0分後何もなかったかのように列車はゆっくり動き出した。 車掌が昼食の注文を取りに来た、手振りと表情豊かに料理の説明をしてくれるなかで、 ピザとかポティトの単語だけ聞き取れたのでポテト料理を取り敢えず2つ頼む。1 2時近く昼食を取る駅Storumanに着く。(1 1時半の予定だったがトナカイ事故でロスが有り少し遅れた) 3 0分の停車、朝食を取った駅より大分広く駅前に1階建ての大きい食堂があり、 隣りにミニバンクが有った。車掌が今朝話したExchangeはここで出来ると自分の仕事で忙しいにもかかわらず私達 の所へ来て教えてくれた。夫がドアーを押しでも叩いても開かない、どうしたのかと思ったら今日は日曜日だと、 車掌も私達も気が着いた。
 さあどうしよう差し当って昼食代が払えない。
食堂は列車の客で大わらわ、それぞれ注文したのをセルフサービスでテーブルへ。 大きなパイを何人で食べるのかと思ったらなんと一人でぺろり、なんでも大盛りなのを見ながらあれだけ食べるのだから体格もいいはずだと思い、お客の空くのを待っていた。1 5分位経ったら注文の品が3人分カウンターに残っているだけだ。どうも車掌と 私達の分らしい。目の大きな色白のがっちりした人が3品を指して何か言っている。店主のようだ。車掌がExchange出来るかどうかその人に聞いたら、交換レートが分かれば両替してくれると言っているようだ。
 幸い保存していたので、そのプリントを出したら、夫に計算機を示しながらドルに 換算してからスエーデンクローネ(Skr)にと2段がまえの変換の末やっと1万円を 両替することが出来た。店主はモロッコ人で3 0才位とのこと。アフリカの暖かいところから、この北欧 に来て暮らしているのだ。2人分の食事代を払ったら店主の丸い大きな目が穏やかになり、夫がムービーと 言ったが通じない。シネマ、「モロッコ」、デートリッヒ、「カサプランカ」、 ハンフリーボガードと並べたらとても喜んで何か言いながら(英語は駄目らしい) 握手をしてくれた。映画趣味の夫のお陰で全然知らない国の人と触れ合うことが 出来た。4 0年以上の映画、主に洋画との付き合いの賜物だ。会話も映画のお陰と言う。
 車掌さんは店主のスエーデン語と夫の英語の通訳を手振りを交えて一生懸命やってくれた。夫も大奮闘、私は何も出来ず3人の顔を見ているだけだった。 客達は既に食事を済ませて列車に戻っていた。発車時刻が過ぎてるので待ち兼ねてる 様子だ。車掌さんは私達のせいでさぞかしお腹が空いたことだろう。3人が乗ってすぐ発車した。やっと食事が出来た。ジュースとフライドポテトに ミ-トカツが注文の品だ。1人分を2人で食べてもまだ多い。お腹が空き過ぎたせいかあまり入らない。夫も同じようだ。気疲れして2人ともビールを飲んで うとうとしていたら、Arvidsjaur駅に着いた。
鉄道施設展示館 別の方から来た列車と連結の為しばらく停車。抜けるような空の青さと冷気に誘われて下車。熱いコーヒーを夫と飲んでいたら、 家族連れの人達が話しかけてくれて、2人の写真を撮ってくれた。 連結して4輌編成で出発、荒涼とした山を奥へ奥へと列車は走る。4 0分位でMoskoselに着く。ここでも2 0分の停車。
 駅前の赤い小さい建物に鉄道施設建設の歴史が保存されていた。 写真や工具などが展示しである。こんな山深い所で手作業で成し遂げた人力に感心 してしまった。出発して暫くしたら水を満々と湛えた河は真っ白な雲や、 浅緑の樹々を写している。そんな美しい景色の中を北へ北へと走って行く。1 7時4 5分Maitumに停車、駅前にはこの地で取れるのを素材にした手作りの品を 売るテントが2張りと軽食用のワゴン車が一台のみ。トナカイの皮で作った 小さくグレースの文字と鹿の絵の焼き印がしてあるセカンドバックを買う。店の人は売り付ける事はしないが買ったときの目はとても暖かい。
北極圏 3 0分位してから発車。だんだん雲が広がり車窓からも寒さを感じる。2 0分も走った頃Geog Polcirkeln (北極圏)の入口に着く。記念の写真を撮る為だろうか1 0分程ここで列車は停車。「おお寒い」思わず大声をだす。 私みたいな細く小さい白樺は葉も幼い。大小の石がごろごろして、茶色い苔が生えて いる。簡単な木の立て札にPolcirkelnと書いてある前で、シャツターをきる。 (列車で顔馴染みになった人が夫と2人で並んだのを写してくれる) (右の写真は北極圏)
 北極圏入り口の立て札が、質素なのが観光ずれしていなくて感じが良い。 ここを出発すれば終着駅ガリベラまで約3時間は停車しない。 流石に疲れてうとうと…少し寝たらだいぶすっきりした。 目が覚めると大きな湖が迫り、遠くまでよく見渡せるほど空気は澄んでいる。 水上ヘリコプターも遥かに見える。
 白樺の樹木は、朝方は美しい白と一本一本立ち並んでいた風景が、北上するに つれて白色が黒ずんできた。また一本立ちしていたものが、根元から二本となり 次は三本・四本と群れて樹立しているのを見るようになった。キビシイ気候とそれに冬風の強さが想像されて、自分達のイメージとは違う白樺を 観察出来て、勉強になった。

  −− 北極圏に入れば夏とて白樺の芽の黒づみは果てなく続く −−

 1 9時を回っているのに日中のように明るい。北極圏に入ると白夜とのこと まさしく北欧の夏。(夏至の前後2か月が北欧の夏で、白夜とのこと。「I地球の歩き方」で知った。) 2 0時2 5分定刻にガリベラに到着。トナカイ事故と私達のせいで昼食の時に遅れた分はどこで取り戻したのだろう…。 陽射しが眩しく輝く冷気の中を予約しておいたホテルへ。 駅前の白く、かわいい建物。
フロントの横に手織りの小さなタペストリーがさり気なくかけてある。 どことなく気配りの感じられる部屋で21時半頃、疲れがどっと出てダウン。



6月1 3日(月)
 朝食を終えて出発まで時間があったのでショーケースを見ていたら、トナカイの皮の コイン入れが目についた。グレースと印が押してあり昨日買ったセカンドバックと 同じ製品、父が小銭入れが壊れたと言っていたのを思い出し一つ買う。 フロントのお嬢さんが細い指と素敵な笑顔で作りの説明をしてくれた。
  9時半過ぎホテルを出発。雪を頂いた山からの冷気、透き通る青い空に帚で掃いた ような雲がさっと出てはすうっと消える。駅の温度計が10度を指していた。 ガリベラ9時50分発の列車を待つ。定刻を過ぎても列車の来る気配はない。 そのうち現地語でアナウンスがあり、遅れてる事を告げてるらしい。約40分遅れて到着。
 10時40分発車終点ナルビクまで4時間の旅。車内の大きさにも大分慣れて 2人でゆったり座る。珍しい子供用の車両の側だ。国の違いなど、どこえやら ブランコや滑り台で言葉は通じなくてもなにやらワイワイ楽しそうに遊んでいる。 暫く見ていたが、あまり賑やかなので移動した。今度は大きなテーブルが4卓ある車両へ、1テーブルにはこの国の人なら6-8人は掛けられる。学生が2人居るだけだ。また珍しいのでこの車両へ落ち着く。
 北へ北へと荒涼とした景色の中を走って行く。雪の山から流れ落ちる幾く筋もの 滝が注ぐ川は、遥か彼方まで澄んでいる。民家がちらほら見えてきた。 キールナ近くで凄い警笛が鳴った、昨日の事があったので「またトナカイが轢かれた のかしら」と夫と話しているうち列車は止まった。いつの間にか国道と平行して走っていたので、目撃した車が100m位バックした所で 運転者が列車の運転手へ手を上げて2本の指を示して知らせる。 2頭が犠牲になったらしい。約20分後に発車した。
 アビスコが近ずくにつれ薄化粧の山並。植物のなにも生えない荒涼とした中を列車は 走り続ける。シャーベット状になった小さい湖がいくつも見えてくる。 外は5度位。暫く行くと湖の氷が解けて河の方へごうごう流れるのが目の前に見えて 来た。アビスコを過ぎて長いトンネルに入った。トンネルをぬけてから1時間は走ったろうか今度は、万年雪の山に入る。 氷河期のような寒さが車内にもひしひしと伝わってきて、暖房が効かない程だ。 少しづつ暖房が効いてきたようだ。芝の如き白樺が新芽を微かにつけて寄り添う ように生えている景色に変わってきた。湖は堅くかたく凍っている。 生存できない程の寒さと思っていたら、あちこちにスキーを楽しむ若者の姿が 見えてきたのでホッとする。だんだんフィヨルド(氷河で出来た湾)が見えてきた。どうしても見たかったので 調べてはあったものの初めて目の前にした時は深くて雄大な湾に驚いた。
ドイツ軍が攻めて来た場所 学生さんが「スピークイングリッシュ?」と聞くので夫が「リトル」と答えたら 「ここからドイツ軍の潜水艦が攻めてきたのです」と窓外を指しながらゆっくり 説明してくれた。どこの国でも戦争の歴史はいつまでも消える事なく語り継がれていくのだと改めて 思う。
 ナルヴィクに着くまでの約1時間は吸い込まれそうなフィヨルドの景色に大感激。1 4時5 0分、3 0分遅れてナルヴィクに着いた。先の旅行社が予約したホテルへ小雨の中を地図を頼りに歩いたら数分で着いたが、 満杯とのことで他のホテルを紹介してくれた。
雨が降っているのでタクシーを頼む、ホテルの前で待っていた私達を見て大柄な 若い運転手さんは二、三個の荷物を一度に抱えて車のトランクに入れてくれた。 住宅街の坂を上って行き数分でホテルに着いた。運転手さんは、また荷物をホテルの玄関まで運んでくれ、爽やかな笑顔で手を振り ながら坂道を下りて行った。
 紹介されたホテルはスポーツ関係の宿舎のようでフロントマンは、ラフな格好の この国の人にしては目が細くぶっきらぼうだ。学生客が主なので愛想に乏しいのか しら…。ミーティングや教室に使うのだろうかフロントの前の広い部屋には机と椅子が並べて あり、お客は若い人が多い。案内された部屋には一人用の机とベットが二組づつで 飾り気がなくとてもさっぱりしている。
 1 6時を回っていたが夕食には早いのでexchangeしようと思いフロントでBankの場所を間いてタクシーをたのんだ。来る時は気がつかなかったが、当ホテルは高台に あり回りも広々としている。車窓から前方の雪山や藍色の海を眺めていたら数分で 駅前のBankへ着いてしてまい、もう暫く良い景色を見ていたかったのに… 。Bankは1 6時までなので、近くのBS社へ。窓口に出した1万円札を見て若い男性社員が「ニホンコク」と言って、福沢諭吉を指して「タレテスカ」と聞くので 「慶応大学の創設者」と言ったら、うなづきながら笑顔で両替してくれた。 明日の午前中は当地を見物しようと駅へ寄って地図を探していたら 「日本から来たのですか」と後ろの方で声がする。振り向くと若い女性が一人で ベンチいっぱいに荷物を広げている。私達が大変役にたてている「地球の歩き方」の ガイドブックが目にとまったのと、こんな所で日本の人に会えたことで親しみが 増してお互い話しが弾んだ。小平から来たとのこと。昨年は彼とヨーロッパ旅行をした、今年は北欧をと楽しみにしていたのに交通事故で亡くなってしまい、 一人ぼっちで旅をしている。新聞配達をしてお金をためたのとしんみり話していた。 私達と反対のコースで来て、ナルヴィクで泊まろうと下車してホテルを探すのに ガイドブックを見ていたが心細くなり、ぼんやりしていたら私達が目に止まったので 思わず声を掛けたとのこと。インフォメーションで私達のホテルへ間いてもらったが 空きが無い。列車が入ってきたので次のキールナで探しますと広げた荷物をまとめて バッグに詰め慌てて飛び乗った。無事に宿泊先が見つかるのを祈りながら手を振って 別れた。
 そろそろ1 8時、ホテルまでのんびり歩く広い通りだが車にも人にもあわない。 でもそれぞれに広々とした庭の芝生の手入れや薪を割る人、家の回りにペンキを塗る 主婦と、楽しみながら仕事をしている光景を見て、白夜の時季に長い長い冬 (日照時間は4時間位と言う)に備えいろいろ外回りのことをしておくのだろうと 夫は言う。自分達の手で家を手入れして大切にしている様子にとても感動した。
 1 8時半頃お腹がすいたのでホテルにて夕食。先程のフロントボーイがオーダーを取りに来ておおざっぱにミート料理とフイッシュ料理の説明をしてくれる。 フイッシュのほうを頼んだら、うでた馬鈴薯が沢山付いている。白ワインとビールで 今日も無事に楽しい旅が出来た事に乾杯。食事中にボーイが口に合うかと聞きにきた ので「ベリーグー」と答えたら、ニコッとして「サンキュー」と言った顔が少年の ようで、悪印象がすっかり消えてしまった。やはり北欧のお国柄だろうか、第一印象で決め付けた自分を恥じた。 白身のフライに生野菜がざく切れで添えである。全体に大盛りだが時間をかけて ほとんど食べてしまった。部屋に戻ったら満腹でアルコールも程よくまわり20時頃からぐっすり休む。



6月1 4日(火)
 目が覚めたら6時。10時間も寝るとは…。清々しい気分でゆっくり朝食をとる。 北欧ならではという鰊の酢漬けが種類も豊富に並んでいる。楽しみにしていたので、 早速食べてみた。程よい味に満足。8時半頃チェックアウト。雲り空だが空気は澄んでいる。 ホテルの裏側にロープ・ウェイの乗り場がみ見える。スキー場に一番近いホテルに 宿泊したのだ。広い通りをどんどん下りると建築中の家が見えてきた、木材の資源の豊富な国だけ あって寒さに絶えられるしっかりした造りだ。
 通学時間なので小学生や園児を自転車に乗せたママ達に会う。 朝の慌だしいのはどこの国も同じようだ。雪山と透き通るような海を前方に見ながら少し寒いが心地良い。
  今日の宿泊地アルタへ行くにはトロムソで乗り換える。 当ナルヴィク駅発トロムソ行きは1 2時なのでたっぷり時間がある。
  ナルヴィクはヨーロッパ最北の駅というので、その市街へ出てみた。 大通りの交差点で三菱の乗用車が目にとまる。プレートを指して「三菱の車だよ」と 夫が言ったら運転していた中年の男性がこっちを見て自分の車と同じ国から 来た人と…、親しみの笑顔で手をふってくれた。(ここまでは日本人もあまり来ないのだろうか) 半年近くも寒さに閉じ込められる国でジグソーパズルの本場と聞いたことがある。 書店に入って北欧の景色のジグソーパズルを探したがなかなか気に入ったのが 見つからない。そのうち大雨が降りだした。広い店内をぶらぶらしていたら北欧の風景の来年のカレンダーがあったので 小さいのを1組買う。
 30分位で雨はやんだ、地図を見たら戦争博物館が近い。 魚市場と隣合わせで狭い館内だ。ノールウェーはドイツ軍によって侵攻された という、昨日学生さんが列車からドイツ軍が攻めて来た所と説明して くれたのを思い出しながら模型に見入る。重々しい気持ちで館を出たら青空が広がっていて少し救われた。
  バス発着所の近くのスタンドで早めに軽いランチをとり、隣のスーパーで飲み物と 果物を買う。レジの人は腰を掛けてゆっくり打ってくれる。私は初めて外貨を使う ので手の平にコインを並べたらレジ嬢が笑顔でコインを3個つまんでくれた。
 ナルヴィツクから目的地のノールカップへはバスだけが頼りだ。今日泊まるアルタ へ行くにはトロムソ行きに乗るとのこと。1 0台位並んでいる。 行き先を見つけて運転手に確認をとる。「O K」とうなずく。安心して乗車。1 2時発いよいよ長距離パスの旅。5 0人乗りで3 0人位乗っている。 高い天井なのに頭が付きそうな人が多い中に異国の小さい私達がいやに目立つ。 でも目が会うと微笑んでくれる。郵便物や荷物の配達も兼ねるらしく運転手は大小の荷物をトランクに入れて 定刻に発車。
 中程の2人かけの窓際に私は座る。夫に隣りの14〜15才の学生さんが話しかけた。 自分のランチのサンドイツチを「プリーズ」と2個くれたので「サンキュウ」と 言って早速頬張ったら笑顔が返ってきた。甘味のある美味しいチーズサンドだった。3 0分位走ったろうか小さな町に着いた。学生さんは私達に手を振って降りて行った。
 暫く行くと牧草の豊な中に馬や羊の親子が沢山。羊の子は甘えるように乳を 飲んでいる。子馬は親に付かず離れず飛んだり跳ねたり。親馬の目は優しく そこに注がれる。小さな赤い屋根の点在する長閑な風景はほんとにメルヘンそのもの、 夢のような思いで飽かず眺める。
      
うみ
 −− 森と湖に小さく赤き屋根映えてメルヘンの如きノールウェーの邑 −−

時々停車して郵便局や各家の前に荷物を置く運転手は手慣れたものだ。
 1 6時Nordkjosbotnでバスを乗り換える客は4人。だんだん1人づつ降りて、乗る人はいないのでとうとう私達だけになってしまった。 どんどん北へと走るにつけ夫には内緒だが心細くなってきたが、いつの間にか うとうとしてしまった。Lyngseidetに着いたのが1 7時半、長時間と座った場所がタイヤの上だったせいか 乗り物酔いをしてしまった。
 下車したら冷たい雨が降っていた。寒いお陰でだいぶ気分が楽になった。 若い運転手が港の方を指して話している、私達はここで別のパスに乗り換えるのか と思い荷物を出してもらおうとしたら、手振りをしながらなにか言っているが 分からない。私がゼスチャーをしながら荷物をだしてほしいとあまり言うので 一応出してくれた。
「なぜ荷物を出し渋っていたのかしら」と夫に言ったらLyngseldet
「分からない、ノルウェ一語だから通じなかったね」
10m位の張りぼてのサンタクロースが港に立っている。
雨がだいぶ降っていた がバス酔いもすこし良くなった
ので記念にサンタさんとパチリ1枚。
 乗り換のバスが来るまで雨宿りがてら小さな店に入った。 一回りして出てきたらトロムソからのバスが到着している。 店の前で「ジャパニーズ?」と中年の女性に声をかけられた。 風貌は日本人のようだが「イエス」と言ったら自分の鼻にひとさし指をあてて 「バンコク」と言って微笑んだ。側に居た人がご主人らしい。 私達と同じようにリュックとスニーカーの格好をしている。 お互いもっと話しをしたかったけどタイ語と日本語なので残念。 Olderdalenまではバスに乗り換えてそのままフェリーに乗る。先のバスの運転手は荷物を乗せかえておくから、心配ないよと言ったのだ。 出し渋っていたのではないことが、今になってやっと分かった。 申し訳なく思い夫と笑顔で手を振ったらニコニコしながら見送ってくれた。
 1 8時フェリーは出発。私達の前の席にバンコク夫妻も乗っているが、微笑みをかわしただけ。 すっかり晴れ上がり海面に陽はきらめき残雪の山が迫り来る。雄大な自然の織り成す絶景にバス酔いもすっかり治ってしまった。4 0分のフェリーの旅を終え再びバスでアルタへ向かう。
  1 9時というのに明るい陽射しの海岸線を延々と走る。どこまでも続くフィヨルドがOKSF JORD 頂上光り輝き荒涼たる原野をバスは走りつづける。
2 0時1 5分頂上のOksfjordへ着いた。2 0分の停車。
 残雪の山に固まれて大分寒いが、夜とは思えない陽射しにオルダーフィヨルドの 眺望は素晴らしい。樹木は全然生えていない。ただ一本の大きな太い幹が標識になっている、 その回りに大小のケルンがびっしり。記念に積もうと思ったが 二度と来れそうもないので写真だけにする。出発の時間が来てしまい惜しみつつ頂上を後にした。
 2 1時過ぎなのに陽は未だ沈まない。月は出ない国なのかしらと真面白に思う。 暫くすると、トナカイや羊の家族が牧草を食んでいるのどかな風景が目にとまり、 人里がそろそろ見えて来た。
 2 3時1 5分ようやくアルタへ到着。1 1時間余りのバスとフェリーの旅は終った。西部劇に出て来るような広い所にかたちばかりのバス停がある。 乗客は私達だけなので、運転手にホテルを聞いたら目の前の数戸の建物を指しながら バス停に一番近い白い小さなホテルを教えてくれて、明朝は7時1 5分発なのでバスはここで待ってるからと親切に言ってくれた。
 夜中なのに日中のように明るいのでパークホテルの小さめの文字もはっきり見える。 運転手が太鼓判を押してくれただけあってフロント嬢もホテルによく似合う可愛い人。 住所を記入したら「トウキョ?」と言って微笑んでくれたその爽やかな笑顔に 2人とも疲れと眠さでしょぼしょぼしてた目が覚めて「イエス、ヨロシク」と 微笑み返す。




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